おうちでパレット

パレットおおさきが発行した星のおたよりです。
おうちで気軽に星空散歩を楽しみましょう★

家庭で気軽に星空散歩 第13回
2020.7.6

大崎タイムス連載 第13回
「織姫星と彦星」

 徐々にいつもの日常に戻りつつあるとはいえ,不安も多い毎日。美しい星空を見れば,心も癒されます。こんなときだからこそ、星空を見上げましょう。今回も,家で楽しめる気軽な天体観察の仕方を紹介します。

 7月7日は、七夕(たなばた)。宵の東の空高く、織姫星ベガと彦星アルタイルが輝いています。晴れていればぜひ探してみましょう。でも、空を見上げようとして、目に飛びこんでくるのは、南西の地平線近くでとても明るく輝く木星。その左下には土星が仲良く寄り添っています。あれが織姫星と彦星ですと言われると、騙されてしまうかもしれません。木星と土星は今年、いて座の中で19年ぶりに近づいていて、年末には一つの星にしか見えないほど大接近します。その木星・土星を目印に、ずっと左上、真東の空高く見上げます。青白く輝いているのが、七夕の主役である織姫星ベガ。彦星アルタイルは、織姫の右下の方向、木星・土星との中間あたりに,やや控えめに輝いています。いつもの年であれば、織姫と彦星の適度な距離に、何とも言えないロマンチックな情景を感じるものですが、今年は事情が違います。木星・土星のあまりの密接ぶりに、織姫と彦星が必要以上のソーシャルディスタンスをとっているように思えるのです。七夕だというのに、君たち本気でデートするつもりがあるのかと、思わず余計な心配をしてしまいそうです。

七夕の物語では、二人は年に一度、天の川を渡って会うことになっています。では、クイズです。七夕の夜、本当にこの星たちは、年末の木星・土星のようにぴたっと寄り添って輝くのでしょうか? 答えは、残念ながらバツです。ベガとアルタイルの宇宙空間における実距離は、約150兆キロメートル。新幹線だと約5千万年かかる距離、究極の遠距離恋愛です。この世で最も速い光でも16年かかる距離、つまり16光年離れているのです。織姫が携帯電話で「もしもし、すぐに会おうね」と言ったとします。その声が、電波に乗って光の速さで彦星に届くまで16年。「はーい、すぐに行くよ」という返事が織姫に届くまでが、また16年。二人が光速銀河鉄道「ひかり号」に乗り天の川の中間地点に到着するまでが8年。合わせると最低40年かかります。20歳だった織姫さん、最初のデートは60歳。現実には、とても一晩で会えるものではないのです。

そんな話に、なおさら今晩は晴れてほしいと思うのですが、ご心配なく。曇っても、雨が降っても、二人はぜんぜん悲しくも寂しくもありません。ベガもアルタイルの寿命を、太陽と同じ100億年と仮定し、そんな長い期間に50年に1度のペースで会ったとして、いったい何度デートするのか計算してみました。結果は、なんと2億回。人間であれば、人生100年として、16秒に1回のペースでデートする勘定。つまり、織姫と彦星は、ずっと一緒にいてひと時も離れることがない、宇宙一のラブラブ夫婦というわけです。

今年の七夕の夜は、木星・土星、織姫・彦星のダブルデートを眺めながら、宇宙の壮大さに思いを馳(は)せてみてはいかがでしょう。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:上の星が織姫星ベガ、右下が彦星アルタイル

図:ベガとアルタイル、木星・土星
家庭で気軽に星空散歩 第12回
2020.6.29

大崎タイムス連載 第12回
「闇夜にからす座をさがそう」

 新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときは、気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる、気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 前々回は、有名な北斗七星と二つの1等星をご紹介しました。北斗七星の柄の曲がり具合に沿って、空の高いところに視線を上げると、オレンジ色に輝くアルクトウルス。そのカーブをさらに延長すると、青白く輝くスピカが見つかります。北斗七星からアルクトウルス、スピカに至る大きなカーブを、「春の大曲線」と呼ぶのでしたね。
 さて、スピカの右下、春の大曲線をさらに延長した先を見てみましょう。4つの星が見えています。日本では、「ヨンボシ」「ヨツボシ」と呼んだ地方もあります。よく見ると、台形の形に並んでいます。特徴的な並びで、印象に残りやすい形です。石川県では、船の帆の形に似ているので「ホカケボシ」とも呼ばれていたそうです。星の大海原を渡る帆船のようです。

 西洋の星座では、からす座です。鳥の星座といえば、夏の夜空に輝くはくちょう座とわし座が有名ですが、それ以外には、はと、つる、くじゃく、ふうちょう、ほうおう、きょしちょうも星座になっており、からすを合わせると鳥の星座は9つもあります。

それにしても、カラスが星座になっているとは意外だと思いませんか。闇夜のカラス、ともいいますので、夜空に探すのは難しそうです。しかも、4つだけの星の並びでカラスに見立てるのも無理がありそうです。しかし、からす座は、2世紀の天文学者プトレマイオスが制定したローマ48星座の1つ。由緒ある星座なのです。

ギリシア神話によると、カラスは、もともと太陽の神アポロンの使いの鳥でした。賢くて人の言葉をしゃべり、真っ白に輝く美しい姿をしていたそうです。ところが、ある日、カラスはとんでもない嘘をついてしまい、アポロンの怒りを買ってしまいます。罰として真っ黒な姿にされたうえに、人間の言葉を奪われ、カアカアとしか鳴けないようにされてしまったのです。実は、台形の星の並びというのは、カラスそのもの姿ではなく、天にはりつけするために打ち付けられた4本の釘なのだとか。かわいそうすぎます。

よく見ると、4つの星のほかに、もう1つ星があります。線で結ぶと、カラスが下を向いて、ごめんなさいと謝っているようです。ごめんなさい、ごめんなさいと鳴き続けて、一生懸命主人に許しを請う哀れな姿にも見えてきます。何度謝っても、許してもらえず、カラスはずっと鳴き続けています。そのせいで、ガァーガァーっと、枯れた声になってしまったのでしょう。まさに、声をからすカラス、というわけです。

 からす座は、わかりやすい星の並びのおかげで、見つけやすい星座です。春の大曲線と台形の星の並びをたよりに、探してみてください。双眼鏡で見ると、ごめんなさいと謝る姿が良く見えます。

(文・写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:からす座

図:北斗七星からからす座
家庭で気軽に星空散歩 第11回
2020.6.20

大崎タイムス連載 第11回
「部分日食を観察しよう」

新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときこそ、空を見上げてみませんか。今回も家で楽しめる、気軽な天体観察の仕方を紹介します。

 6月21日は一年で最も日が長い夏至。「夏に至る」と書くように、この日が本格的な夏の始まり。太陽が一年で最も高い位置にきます。この炎天下、さすがに太陽を見上げましょうとは言えません。せいぜい、太陽を手でかざしながら、その高さを実感してください。そのついでに、足下の影の短さも確かめてみましょう。この日、太陽が南の空で最も高くなる南中時刻は、大崎市古川で11時38分。太陽の南中高度は、75度に達します。夏至、冬至、春秋の彼岸のころの南中時刻に、足元の影とともに家族の集合写真を撮っておき、あとで並べてみると、時間の過ぎるのを実感できる、とっておきの記念写真になると思います。
 さて、この日の夕方、全国で部分日食が見られます。前回、日本で起こった日食は、昨年12月26日でしたが、大崎はあいにくの悪天候でした。今回を逃してしまうと、次回は10年後の2030年です。梅雨どきで天候が心配ですが、晴れたらぜひとも見たい現象です。

 ただし、見る際には、強烈な光にはくれぐれもご注意を。適度な薄雲で欠けた形が分かりそうなときでも、太陽を直視することは絶対にしないでください。眼を痛めます。一般的なサングラスでも危険です。日食専用の「日食グラス」を使用するようにしましょう。

 今回は、特別な道具がなくても家庭で安全に楽しめるおすすめの方法をご紹介しましょう。それは、ピンホール法です。準備は、とても簡単です。厚紙に、ボールペンの先や画鋲などで穴を空けるだけ。太陽の光を数十センチ離した白い紙をスクリーンにして投影すれば、欠けた太陽の形を安全に楽しむことができます。穴は大きいほど、またスクリーンまでの距離が長いほど、太陽像は大きくなりますが、その分ぼやけたり、暗くなってしまいます。穴の適当な大きさは、0.5ミリ~1ミリ程度のようです。穴は一個だけはつまんないので、「2020.6.21 大崎」など年月日や地名、家族の名前など、字の形に穴を並べるとよいでしょう。デジカメで撮影すると、良い記録写真になります。小さな穴が空いているものであれば、実は何でもピンポールになります。台所にある穴の開いたおたまや落し蓋、ベルトの穴、穴の空いたプリペイドカード、麦わら帽子。穴の空いた靴下は、ダメかもしれませんが、家中の穴の空いたものを集めておきましょう。何もなくても大丈夫。とっさの場合は、両手を重ねて、指の隙間をピンホールにして日食観測にチャレンジ。夕方、太陽が低い時間帯なので、木漏れ日が家の壁に映っている様子も面白いでしょう。

大崎では、16時12分に欠け始め、17時10分に最大になります。17時55分の終了時には、約10度の高さまで下がりますので、西の見晴らしの良い場所で観察しましょう。日本では、南西の地域ほど大きく欠け、台湾、中国、インド、アフリカ方面では、月が太陽にすっぽりと入り込んで周囲が光り輝く指輪のように見える金環日食となります。インターネットで、オンライン日食観測もおすすめです。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:2019年1月6日の日食(今回の食最大と同じ欠け具合のころ)

図:6月21日の日食経過
家庭で気軽に星空散歩 第10回
大崎タイムス連載 第10回
「月夜に、春の大曲線と夫婦星を探そう」

 新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときは、気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる、気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 6月6日は満月です。月が地球の薄い影に入り込み、ほんの少しだけ暗くなる「半影月食」が未明から明け方にかけて起こります。条件は悪いため無理におすすめできませんが、もし6日の朝、暗いうちに目を覚ましてしまったら、西の空に傾く月をながめてください。

 図は、その前の晩、5日の20時頃の様子です。南を正面に、空全体をぐるりと見渡しているとお考えください。明るいまん丸の月が、東の地平線に昇ってきました。北の空には、前回紹介した北斗七星が見えています。北斗七星から北極星を探して北の方位を確認したら、体を180度回転し、真南に向き直します。そのまま、ラジオ体操の要領で手を腰に添え、上半身を後ろに大きくそると、空のてっぺんのさらに後方に北斗七星が見えています。首を痛めないよう注意しながら、無理のない範囲で空を見上げましょう。

 空全体をぐるりと見渡し、何個の星が見えるか数えてみてください。月夜ですから、数える程しか見えません。でも、晴れてさえいれば、まったく見えないわけでもありません。むしろ、暗い星が見えない分、見やすくなる星の並びがあります。それが、北斗七星と春の大曲線です。

 北斗七星(ひしゃく星)の柄の部分は曲がっています。曲がり具合に沿って、大きなカーブを描きながら南の空高いところに目を向けると、月夜にひときわ明るく輝く星が見つかります。アルクトウルスと呼ばれる春の1等星です。オレンジ色をしています。日本では、麦が収穫時期を迎えるこの季節に見頃を迎える麦色の星なので、「麦星」と呼ばれています。さらにカーブを延長すると、南の中空に、控えめながらしっかりとした明るさの星が輝いています。こちらも春の1等星・スピカです。美しい青白い色で輝き、「真珠星」とも呼ばれます。日本では、この二つの星を合わせて、「夫婦星(めおと星)」と呼びます。日に焼けたかお酒に酔ったか、顔を赤らめた父さんと、色白美人のお母さんのようです。

再び北斗七星に戻り、麦星(アルクトウルス)、真珠星(スピカ)に至る大きなカーブをたどります。「春の大曲線」です。図では大きく感じませんが、実際の空では非常に本当に大きなカーブです。以前紹介した全天一の巨大星座、うみへび座に匹敵するほどです。両手を広げて空を仰ぎ、大きく深呼吸しながら眺めてみることをおすすめします。

お父さん星アルクトウルスの直径は太陽の約24倍。実際の明るさも太陽の約100倍で輝く超巨漢。一方お母さん星スピカの表面温度は2万度。情熱的な夫婦です。しかも、アルクトウルスは、1秒間に140kmという猛スピードでスピカの方に向かって突進中。およそ50000年後には、このふたつの星は、すぐ近くで接近して輝きます。「おーい、すぴかー。いま、行くぞーー! 5万年待ってろよ!」。この夫婦星、天文学的にも、非常にラブラブなようです。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:北斗七星と春の大曲線

図:春の大曲線全天
家庭で気軽に星空散歩 第9回
2020.5.29

大崎タイムス連載 第9回
「北斗七星とおおぐま、こぐま」

 新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときは、気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる、気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 この季節、夜の早い時間帯に北の空を見上げると、北斗七星が輝いています。北斗七星は、小学校4年生の理科の教科書にも登場する有名な星の並びです。北斗の「斗」は、水をくむ道具・ひしゃくのことです。ひしゃくと言ってもピンとこないお子さんも多く、プラネタリウムではスプーンやなべ、底の深いフライパンのような形と案内しています。すると、だいたいこのあたりと大雑把に指すだけで、「あ、あった」という声が響きます。四角い部分は、水が入るところ。取っ手もあります。とってもわかりやすい星の並びです。明るい星が多く、よく目立つので、世界各地でさまざまな言い伝えが残されています。

 わかりやすいだけでなく、とても便利でもあります。北の目印、北極星を見つけ、方位を知る道具にもなります。その方法をご紹介しましょう。

 まず、ひしゃくの水が流れる場所から、順に「ほ」の星、「く」の星・・・と呼んでみましょう。ななつ星ですから「ほ・く・と・し・ち・せ・い」と7文字がピタリとはまります。次に、「ほ」と「く」の星を使い、その間隔を5つ分、水が流れる方向に向かって伸ばします。すると、一つぽつんと輝いている明るめの星が見つかります。それが、北の目印・北極星です。よく見ると、北極星のところにも、小さな北斗七星のような星の並びがあります。北斗七星は「おおびしゃく」、こちらは「こびしゃく」として昔から親しまれています。

 もういちど、北斗七星を見ながら、今度は別な呼び方で「く・ま・さ・ん・の・しっ・ぽ」「お・お・ぐ・ま・の・しっ・ぽ」。そうです、北斗七星は、おおぐま座のお腹から尻尾にかけての一部分だったのです。ところで、北斗七星の6番目の「せ」の星は、「しっぽ」ではなく「しぽ」でしょ」と言う方は、よくご覧ください。ちゃんと二つの星に分かれて見えるはずです。「し」の星のそばに、ちいさな「っ」の星が輝いています。昔は、この星を兵隊さんの視力検査に使ったそうです。いくら頑張っても一つにしか見えないという方は、目が少々お疲れかもしれません。

そのような方は、ぜひ双眼鏡を使って見てください。写真のように、二つの星が近づいて並んでいる様子がわかります。明るいほうが、ミザール。暗いほうは、アルコルです。この二つを合わせて「寿命星」とか「死兆星」と呼ぶ地方もあり、この星が見えなくなるといよいよお迎えが近いとか。なんとも縁起の悪い話ですが、それは、単に歳とともに見えづらい目になる、というのが事の真相のようです。つまり、老眼というわけですが、「私も最近、見えづらくなってきまして」と星をみる会でお話ししたところ、あるお客様は私の頭をチラリと見ながらこう言いました。「あら、最近でもなさそうですが・・・」。

さて、皆さんはちゃんと二つに見えますか。晴れたら家族で星空視力検査合戦と、楽しく盛り上がってみてはいかがでしょうか。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:ミザールとアルコル

図:北斗七星とおおぐま座、こぐま座
家庭で気軽に星空散歩 第8回
2020.5.25

大崎タイムス連載 第8回
「うみへび座の頭部を探そう」

 新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときは、気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる、気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 つい先日まで夕空の主役として圧倒的な輝きを誇っていた金星は、この数日で、夕空低くめっきり見つけにくくなりました。それもそのはず。6月4日、太陽に見かけ上最も近付く「内合」を迎え、それ以降、宵の明星から明けの明星となるからです。
 金星に代わって、今晩の主役は美しい三日月です。薄明の残る空に見える細い月はとても美しく、心が癒やされます。ぜひ双眼鏡を使って見てみてください。よく見ると、月の下に、明るい星が二つ輝いているのが分かるでしょうか。月のすぐ右下が水星。そのさらに右下で地平線に沈もうとしているのが金星です。夕焼けが紅色から深い群青に溶けゆく20時少し前が、月、水星と金星を同時に観察するチャンスです。今晩のドラマティックな天文ショーのクライマックスであると同時に、今季、宵の明星としての金星の見納めになるでしょう。

 やがて夜のとばりが下り、月も沈む20時半ころ。ネコノメ星として以前紹介したふたご座の兄弟星カストルとポルックスが、同じ高さで仲良く並んでいます。ぎょしゃ座のカペラも、西からだいぶ北寄りの空に輝いています。カペラ、カストルと手で結び、そのまま大きく南西の空に視線を移すと、しし座のレグルスが青白く輝いています。クエスチョンマークを裏返したような「ししの大鎌」を頼りに、しし座の形を確かめましょう。

さて、それらの星を一通り見つけたら、いよいようみへび座探しにチャレンジです。この星座は東西に長大で、東の地平線に顔が現れてから尻尾の先まで出揃うまで、実に8時間以上を要します。88星座の中で最大の星座。次回紹介するおおぐま座より大きなへびは、スーパーヘビー級というわけです。
 うみへび座の姿を一望するのは至難の業ですが、今回は、頭部の見つけを紹介します。

その方法は二通りあります。ひとつは、カストルとポルックスを目印に、その間隔を5倍ほど左に伸ばしていく方法。もうひとつは、しし座の腰にある星とレグルスを結び、1.2倍伸ばす方法です。

 うみへび座の頭部は、写真のように、特徴のある星の並びです。まるで、口をぱくっと開いたヘビそっくり。3等星と4等星の暗い星ばかりですが、ユニークな形なので意外と目立ちます。再びカストルとポルックスに戻り、そこからうみへび座頭部を貫くラインをそのまま伸ばすと、ぽつんと輝く明るめの星が見つかります。アルファルドという2等星で、アラビア語で「孤独なもの」を意味します。コル・ヒドラエという別名は、ラテン語で「蛇の心臓」。双眼鏡で見ると、とてもきれいなオレンジ色をしています。
うみへび座の頭部からアルファルドまでの星の並びを改めて見てみましょう。ワラビの若葉がくるりと巻いているような形をしています。山菜採りシーズンに見ごろを迎えるので、私は、わらび座と勝手に命名したりしています。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:うみへび座頭部(双眼鏡で見たイメージ)

図:カストル・ポルックスやしし座からうみへびの頭へ
家庭で気軽に星空散歩 第7回
2020.5.20

大崎タイムス連載 第7回
「しし座とかに座を探そう」

 新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときは、気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる、気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 22日の金曜日、晴れたら、ぜひ夕方の西の空をご覧ください。前回もご紹介したとおり、金星と水星が大接近します。7時半ごろに金星がひときわ明るく輝き始め、ほどなく、そのすぐ左側に明るい星がくっついているように見えます。水星は、なかなか見るチャンスがない惑星ですが、金星を目印にすれば探しやすくなります。本日21日も、金星のすぐ下に見えますので、観察してみてください。なお、24日には月齢1.7の細い月が金星、水星と三角形に並び、その右上にはおうし座の2等星エルナト、ぎょしゃ座の星たちも見えて、素晴らしい眺めです。肉眼でも見えますが、双眼鏡があれば一層楽しめます。
 金星の右上には、カペラが輝いています。金星の左上にはふたご座の兄弟星カストルとポルックスが仲良く並んでいます。カペラとポルックスを結んで大きく伸ばしていくと、クエスチョンマークをひっくり返したような星の並びが見つかります。雨どいをかける金具の形に似ているので、「樋掛け星(といかけ星)」とも呼ばれます。プラネタリウムでは、「ハテナ」を裏返した形なので「ナテハ」のマークと紹介することもあります。
 西洋では、大きな草刈り鎌のように見えるので「ししの大鎌」と呼ばれ、ここが春の星座しし座の頭の部分です。台形はライオンの体、三角は尻尾。他の星もていねいに結び合わせると、ちゃんと前足や後足もあります。名前と形が一致しない星座が多いなかで、これほどわかりやすい形の星座はあまりありません。

 ししの胸に輝く星は、一等星レグルス。ラテン語で「小さな王様」の意味です。この星のそばを太陽の通り道が通っていることから、特別な星とされていたようです。ライオンのたてがみに輝くのはアルギエバで、アラビア語で「額(ひたい)」。ししのしっぽに輝くデネボラは、「ししの尾」です。ししの形にひとつひとつ丁寧に結びながら、線で結ばれる星を数えてみましょう。16個あります。しし座ですから、し・し=16というわけです。

 しし座の向く先には、かに座があります。誕生日星座としておなじみですが、暗い星ばかりで、目にする機会の少ない星座です。レグルスやポルックスを目印に探すコツを紹介します。はじめにレグルスとポルックスを結びます。ちょうど中間点から、ややポルックス寄りの場所に狙いを定め、そこからプロキオンのほうに少し視線を下げます。凝視するのではなく、軽くそらし目気味に見てください。暗い夜空では、小さな雲が浮かんでいるように肉眼でもはっきりと見えます。双眼鏡を使えば、美しい星の集まりが見えます。プレセぺ星団です(写真)。この星団を取り囲むように、暗い星が台形を作っていて、まるでかにの甲羅のようですね。すると、プレセぺ星団は、カニ味噌といったところでしょうか。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:かに座のプレセぺ星団(双眼鏡で見たイメージ)

図:金星・水星としし座、かに座など
家庭で気軽に星空散歩 第6回
2020.5.14

大崎タイムス連載 第6回
「ぎょしゃ座の五角形を探す」

 新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときは、気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる、気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 今回は、冬の星座のラストを飾る「ぎょしゃ座」をご紹介しましょう。
ぎょしゃ座・・・噛まずに読めますか? ぎょさざ?、ぎょさじゃ?、ぎょーざ? なんて呼びにくい星座でしょう。ぎょしゃ座・・・この機会に何度も口にして、覚えていただきたいと思います。

 さて、呼び方は難しいぎょしゃ座ですが、探しかたは簡単です。いまなら一番星の金星が良い目印になってくれるからです。
今晩の8時頃、まずは金星を見つけます。まばゆいほどの圧倒的な輝きを楽しんだら、視線をその右上に向けます。明るくぽつんと輝いているのが、一等星カペラです。自動車の名前としてもおなじみの星です。有名なだけでありません。とてもきれいな色をしています。お持ちであれば、ぜひ双眼鏡を向けてみましょう。淡く優しい黄色味がかった輝きです。双眼鏡を向けたついでに、カペラのすぐ下に、3つの星が作る小さな三角形をさがしてみましょう。それぞれ、アル・マーズ、ホエドゥスⅠ、ホエドゥスⅡという名前があります(写真)。

 カペラの色合いと小三角形を見たら、次は肉眼で将棋の駒のような星の並びを探してみましょう。一等星のカペラを含む見事な五角形が、ぎょしゃ座です。ぎょしゃというのは、馬車に乗って馬を操る人(御者)のことです。ギリシア神話では、馬車を発明して戦場を駆けたアテネ王・エリクトニウスの姿とされます。

 日本では、その形そのままに「五角星」と呼ばれていました。私のプラネタリウムでは、受験生にこの星をおすすめしています。ごかくせい、ごーかくせい! とても縁起が良さそうな名前で好評です。古代中国星座では、五車(ごしゃ)。五台の車に山積みされるほどたくさんの書物を意味するのだそうです。中国と日本との呼び方で、ごしゃ、ぎょしゃと似た響きなのは興味深いところです。

 西洋の星座絵では、エリクトニウスがヤギを抱っこした姿が描かれています。ラテン語で、カペラは「メスのヤギ」、アル・マーズは「オスの子ヤギ」という意味があります。

 最後に、エリクトニウスの右足に輝く2等星エルナトを探しましょう。エルナトはアラビア語で「(角で)突くもの」という意味。名前のとおり、おうし座のツノ先の星で、正式にはぎょしゃ座の星ではありません。エルナトは、いま金星に接近しているので、見つけやすいでしょう。22日には、水星が金星に大接近し、エルナトとともに三角形をつくります。さらに24日には、これに細い月まで仲間入りします。金星と水星、月、エルナトの接近、集合の様子は見逃せません。ご家族でぜひ観察してみてください。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:ぎょしゃ座のカペラ付近(双眼鏡で見たイメージ)

図:金星からぎょしゃ座の五角形を探す
家庭で気軽に星空散歩 第5回
2020.5.9

大崎タイムス連載 第5回
「ネコの星を探してみよう」

 新型コロナなど不安がいっぱいで、気分が滅入りそうな毎日。こんなときは、気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる、気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 この頃、とても日が長くなりました。5月10日の日没は、午後6時38分です。一番星・金星が西の空に輝き出すのは7時頃で、金星に続く明るい星が見え出すのは7時半を回るころ。ふと気付けば、先月まで見えていた冬の星座のオリオンは、見納めになってしまいました。

 金星の左上に目を向けてみましょう。二つの星が、横に仲良く並んでいます。ふたご座の兄弟星で、右がカストル、左がポルックスです。ギリシャ神話では、カストルがお兄ちゃんですが、良く見ると弟のポルックスのほうが明るく輝いています。ポルックスが1等星であるのに対し、カストルは2等星です。肉眼でも、明るさの違いは分かりますので、じっくり明るさ比べをしてみましょう。さらに良く注意してみると、色の違いもわかるはずです。双眼鏡を使うとはっきり分かります。ポルックスはややオレンジ色、カストルは青白い色をしていて、色の対比がきれいです。星の色には、表面の温度が反映されていて、青白く輝くカストルは高温の星なのです。弟より暗くて目立たなくても、実は情熱的な兄であるというわけです。

 さて、これらの星をじっくり見ているうちに、二つの星が何やら目玉のようにも思えてきます。実は、この二つの星には、「メガネボシ」とか「ヤブニラミボシ」という異名があります。なるほどそうかと思いながらじっと見つめるうちに、逆ににらみ返されるような気持にもなります。そうしてにらめっこしているうちに、暗闇にひそむネコの目がギョロリと光り、こちらを見ているようにも思えてきます。またまた別の名を、「ネコノメボシ」とも。ネコ好きの方は、ぜひ探してみてください。

 この近くに、やまねこ座という星座もあります。カストルとポルックスのすぐ上に、大きなネコが体を伸ばして横たわったように星が並びます。前回は、たった二つの星の並びで作られるこいぬ座には、無理があると述べました。こちらも7つの星を適当に結んだだけで、とてもネコの姿には見えません。それもそのはず、このやまねこ座は、おおぐま座としし座の間にぽっかりと空いていた「星座の空白地帯」を埋めようと、ポーランドの天文学者ヘベリウスが1687年に、半分遊び心で作ってしまった星座なのです。明るい星もなく、とてもヤマネコの姿には見えず、作った本人でさえ「この星座を見るためには、ネコの目が必要だ」とうそぶいてみせたとか。それぐらい、やまねこ座を探すのは至難の業です。

 コロナ禍が過ぎ去って、一日も早くプラネタリウムでこの星座を皆さんに案内できることを祈っていますが、今は、ふたご座のネコノメボシを目印に、ヤマネコがひそむだいたいの場所を見るだけで良しとしましょう。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:ふたご座のネコノメボシ(双眼鏡で見たイメージ)

図:金星からネコノメ星とやまねこ座へ
家庭で気軽に星空散歩 第4回
2020.5.2

大崎タイムス連載 第4回
「金星,ベテルギウス,シリウスからこいぬ座へ 」

 新型コロナなど不安がいっぱいで,気分が滅入りそうな毎日。こんなときは,気分転換に星空を見上げてみませんか。今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる,気軽な星空散歩の仕方を紹介します。

 西の空に一番星・金星が輝いています。今晩7時半から8時頃には,金星から左下に向かって,ベテルギウスとシリウスが一直線に並んでいるのが見えます。シリウスとベテルギウスの場所を確かめたら,形の良い三角形を結ぶようにして,もう一個明るい星,プロキオンを見つけましょう。冬の大三角。小学校4年生の理科の教科書にも登場する有名な星の並びです。

 プロキオンの名前の由来は,「犬の前」。英語では,プレ・キオンといったところです。前回紹介したおおいぬ座は,シリウスを中心に,犬そっくりのわかりやすい形です。それでシリウスは,古くから犬の星・キオンと呼ばれました。プロキオンは,犬の星に先駆けて東の地平線に顔を出すので犬の前というわけです。やがて,プロキオンは,ゴメイザという星とたった二つだけで,こいぬ座になります。二つだけで犬の姿に見立てるのは,かなり無理があります。いっそのこと「一(いち)座」と名を改めたほうがわかりやすいのではと思うのですが,考えてみれば「一」は英語でワンだけに,やはり犬の星座のままでいいのかなとも思います。

 冗談はさておき,プロキオンの近くをよく観察してみましょう。ゴメイザのすぐ右上に,4等星と5等星の暗い星があります(写真)。暗い空では,肉眼でも見えますので,視力に自信がある方はチャレンジしてみてください。若い人ほど瞳は暗闇で大きく開きます。お子さんは,楽に見えるかもしれません。残念ながら見えなかったお父さんは,ぜひ双眼鏡を使ってリベンジしてみてください。ゴメイザと二つの星でできる小さな三角形は,犬の頭に見えてきます。何度も見ていると,そのうちかわいい子犬の姿に思えてくることでしょう。

 ちなみに,ギリシャ神話では,こいぬ座は,主人に忠実なメランポスという犬がモチーフです。ある事件が原因で二度と帰らない主人を,さびしい思いで待ち続ける忠犬メランポス。ゴメイザは,「泣き濡れる瞳」という意味です。主人を待ち続けるメランポスの涙,というわけです。
前回と今回は,犬の星座を巡る星空散歩のコースを紹介しました。犬の散歩が日課の方や犬好きの皆さん,ぜひ星空の犬も楽しんでください。実は,ネコに関係する星座やネコノメ星と呼ばれる星もあります。次回は,猫好きな方必見ですよ。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:プロキオンとこいぬ座(2020.4.27撮影)

図:ベテルギウス,シリウスからこいぬ座へ
パレほしたより No.3
2020.5.1

 パレほしたよりNo.3ができました!
今回は黄道12星座のひとつ「しし座」です。おうちでぜひお使いください。

・パレほしたよりNo.3 しし座(pdf)
家庭で気軽に星空散歩 第3回
2020.4.26

大崎タイムス連載 第3回
「ミツボシからシリウス,おおいぬ座へ」
 
 新型コロナなど不安がいっぱいで,気分が滅入りそうな毎日。こんなときは,気分転換に星空を見上げてみませんか。
今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる,気軽な星空散歩の仕方を紹介します。今回は,オリオンのミツボシからシリウス,おおいぬ座付近を巡ってみましょう。

 前回紹介したミツボシは,明るくわかりやすいだけでなく,星空を散歩する際に夜空の目印として重宝します。ミツボシは,真東から昇り真西に沈みますので,この時期にオリオン座が沈む方向から,だいたいの西の方位を知ることができます。
ミツボシを見つけたら,その並びを右に伸ばしていきます。前々回紹介したおうし座の一等星アルデバランが見つかり,そのまま延長するとプレアデス星団・すばるにたどり着きます。アルデバランとすばるの上には,金星がまぶしく輝いています。4月26日の宵には,そこに月齢3の細い月が近付いて,とても素晴らしい眺めです。

 もう一度ミツボシに戻りましょう。今度は,その並びを左の方向に伸ばしていきます。すると,金星ほどではありませんが,とても明るい星が輝いています。おおいぬ座の一等星シリウスです。星座を形づくる星々の中では,もっとも明るい星です。イヌの星だけに,ナンバーワン,というわけです。
 明るさだけでなく,色にもご注目。本来は青白く見える星ですが,西の空に低くなるこの時期には,赤や青が混じって見えることがあります。「大気のプリズム効果」によって色がめまぐるしく変化し,まるで,夜空で燃えさかる炎のようです。この様子は,肉眼でも楽しめますが,双眼鏡があれば,さらにきれいに見えます。シリウスという名前には,「天を焼き焦がすもの」という意味があります。双眼鏡でシリウスを見たついでに,その下の散開星団M41にも注目しましょう。十数個の星がこぢんまりとまとまっています(写真)。

 さて,シリウスの近くの星をたどりながら,犬の姿をさがしてみましょう。シリウスの右下に,ミルザムという2等星があります。これは,犬の前足です。シリウスの左下に,ウェズン,アダラ,アルドラと呼ばれる星が三角形を作っています。ここが,犬の腰,しっぽ,そして後ろ足です。シリウスのすぐ上には,2つの暗い星があって,犬の耳。シリウスと結んでできる三角形で,犬の顔になります。それらを,結び合わせると,なるほど犬そっくりの姿が夜空に浮かんできます。

 おおいぬ座は,オリオン座やおうし座と同様に冬の星座ですので,間もなく見納めです。空が暗くなってすぐに探さないと,あっという間に建物や山の向こうに隠れてしまいます。20時前には見ておきたいものです。でも,低く見えるぶん,シリウスの七色の輝きがよりいっそうきれいに見えますし,この時期だけのおすわりをしたかわいい犬の姿も見逃せません。南西の見晴らしが良い2階の窓やベランダから,ぜひ探してみてください。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:シリウスと散開星団M41(双眼鏡で見たイメージ)

図:ミツボシからヒアデス・スバル,シリウスへ

家庭で気軽に星空散歩 第2回
2020.4.22

大崎タイムス連載 第2回
「オリオン座を見つけよう」

 新型コロナなど不安がいっぱいで,気分が滅入りそうな毎日。こんなときは,気分転換に星空を見上げてみませんか。
 今回も明るい街の中や家の近くでも楽しめる,気軽な星空散歩の仕方を紹介します。今回は,オリオン座です。

 前回は,一番星の金星を紹介しました。その金星を目印に,そこから左に目を向けると,オリオン座が輝いています。明るい星が多いので,自宅の西か南の窓からも見えていると思います。
 オリオン座の並びはとても特徴的です。3つの明るい星が,ちょんちょんちょんと仲良く並んでいるのが,オリオンのミツボシ。それを挟むように左上に赤く輝くのがベテルギウス。右下に,青いリゲルが向かい合って光っています。全体で,リボンや太鼓の形に似た星の並びが,オリオン座です。

 ベテルギウスとリゲルの色の違いを楽しんだあとは,ふたたびミツボシを眺めます。どれもみな青白い星で,行儀よく並んでいます。その下にも,暗い星が3つ,縦に並んでいるのが見えますか。ミツボシより暗いので,小ミツボシ,と呼ばれます。
 できれば,部屋の明かりを消してじっくり観察しましょう。すると,小ミツボシの真ん中の星は,なんだかにじんでいるように感じませんか?

 ここで双眼鏡の出番です。まずミツボシを視野に入れ,そこから慎重に小ミツボシを確かめます。ぼうっとした小さな雲のような光が見えてきます。オリオン大星雲です。ここは,全天で最も活発に星が生まれてくる場所です。星雲は,水素やチリからなる星間物質で,星のお母さん。その中に集まる青白い星は,生まれたての赤ちゃん星です。

 先ほどのベテルギウスは,星の進化の末期にある赤色超巨星です。つまり,星のおじいちゃんです。ベテルギウスは,この冬にいつもより暗くなり,いよいよ爆発してしまうのではないかと心配させられました。でも,2月下旬から再び明るさを取り戻し,いまではすっかりもとの元気な姿で輝いています。

 このように,宇宙のダイナミックな営みを気軽に目撃できるオリオン座。星空の中でとびきり素晴らしい場所だと思います。
 25日から27日にかけて,オリオン座と金星の間に細い月が見えます。家の窓やベランダ,軒下からぜひ眺めてみてください。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

写真:オリオン大星雲付近

図:オリオン座

家庭で気軽に星空散歩 第1回
2020.4.21

大崎タイムス連載 第1回
「一番星・金星を見つけよう」

 新型コロナなど不安がいっぱいで,気分が滅入りそうな毎日。こんなときは,気分転換に星空を見上げてみませんか。
 ある脳科学者によると,人は,両手をいっぱいに広げて空を見上げると落ち込むことができなくなるそうです。遠出できなくても,自宅のベランダや軒下からでも星空を見上げることができます。換気のついでに,窓から月や明るい星を探すだけで,空気も気分もリフレッシュできます。
 これから何回かのシリーズで,自宅でもできる気軽な星空観察のコツを紹介します。

 いま,日没後の夜の早い時間帯,西の空に一番星,宵の明星・金星が見えています。金星は,太陽や月を除けば,最も明るく見える星です。日没後の18時半ごろから,ひときわ明るく輝きだします。西の空が見通せる場所であれば,灯りのついた部屋の窓からも簡単に見つかります。夕食後のリフレッシュタイムに,西側の窓を開けて探してみてください。ただし,21時半過ぎには西の地平線に沈んでしまいますので,暗くなってから早い時間帯がおすすめです。

 金星のまばゆいばかりの光をたっぷりと浴びたあとは,近くに見える明るい星もついでに探しましょう。金星の左下,腕をいっぱい伸ばしたときのゲンコツ一個分のところに,明るい星がぽつんと見えます。よく見ると,オレンジっぽい色をしています。おうし座の一等星,アルデバランです。アルデバランのまわりをよく見てください。暗い空では,20個程の星がVの字に集まっています。肉眼でも十分に楽しめる星の集まり,ヒアデス星団です。
 アルデバランは,牛の目。ヒアデス星団の三角形は,牛の顔。そこから2本,長いツノが上の方向に伸び,りっぱなおうしの姿が見えますか。

 ここでもう一度金星に戻り,そこから右下を見ると,何やら星がごちゃごちゃと集まっているのが見えます。見にくいときは,部屋の電気を消して周りを暗くし,目を暗闇に少し慣らします。視力のいい人だと,5つか6つの星が見えます。少し視力が弱い方でも,そらし目で見ると,ぼうっとした光が見えるはずです。
 これは大変有名な天体で,谷村新司さんも歌った,すばる=プレアデス星団です。すばるは,天体望遠鏡で見るより双眼鏡のほうがきれいです。双眼鏡がある方は,ぜひ見てください。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)

 写真は,4月6日の金星とすばる,ヒアデス星団の接近の様子です。双眼鏡で見たイメージが伝わるように,100mm望遠レンズで撮影してみました。
写真:金星とすばる,ヒアデス星団(2020.4.6撮影)

図:金星とおうし座

パレほしたより No.2
2020.4.17

 パレほしたよりNo.2ができました。夕方の西の空で一際輝くあの「金星」を紹介します。おうちでぜひお使いください。

 4月20日発行の大崎タイムスに掲載されました。
ありがとうございます!

パレほしたよりNo.2 金星(pdf)
パレほしたより No.1
2020.4.4

 星は山の上や暗いところに出掛けなくても,おうちの庭や窓からでも見ることができます。ご自宅で星空散歩を楽しんでいただけるよう,おすすめの星たちを紹介した「パレほしたより」を作りました。ぜひお使いください。

パレほしたよりNo.1 おすすめの星(pdf)