2013(平成25)年は癸巳(みずのとみ)=「へび年」です。
夜空には、へびに関係する星座が4つあります。
88星座の中で最も長大な春の星座「うみへび座」。
夏の星座で、医術の神アスクレピオスの姿「へびつかい座」と「へび座」。
南半球とプラネタリウムでしか見られない「みずへび座です。
へびは健康と長寿の象徴で、長いものは縁起がよいと言われます。
ぜひ夜空を見上げ、へびの星座を探してみましょう。
図はステラナビゲータ(アストロアーツ)で作成
各月の星空と主な天文現象
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
●大彗星の年
「彗星のごとく」という言葉の通り、夜空に突如現れては消えていき、時に長い尾をたなびかせて輝く彗星(すいせい)。
古来よりその姿は人々の関心を集め、西洋では髪の毛を意味する「コメット」、中国や日本では「ほうき星」と呼ばれました。
過去に現れた有名な彗星として、1965年の池谷・関彗星、1977年のウェスト彗星、1986年のハレー彗星、1996年の百武彗星、1997年のヘール・ボップ彗星などがあります。
最近では、2007年にマックノート彗星(写真)が南半球の空で史上最大級の彗星となり話題になりました。
年に百個近い彗星が現れますが、肉眼でも楽しめる大彗星は数年から十数年に一個。そう多く現れるものではありません。
ところが、今年は大彗星が二つも見られるかもしれません。3月の「パンスターズ彗星」と、12月の「アイソン彗星」に注目です。
大彗星の年。へびのように長い尾をたなびかせて輝いてほしいものです。
●春の夕方に輝くパンスターズ彗星
2011年6月6日、ハワイ・ハレアカラにある口径1.8mのPan-STARRS 1
望遠鏡で発見された彗星です。
今年3月10日に太陽に4500万kmまで接近し、最大マイナス3等ぐらいまで明るくなる可能性があります。
図 パンスターズ彗星
順調に成長すれば、3月中旬以降、西の空低く日没数十分後の夕焼けの中に雄大な姿を現し、4月上旬にかけて肉眼で楽しめる大彗星となることが期待されます。その姿はかつてのヘール・ボップ彗星のように見えるかもしれません。今のうちから,西〜北の空が見渡せる観察場所を探しておきましょう。
4月に入ると少しずつ暗くなりますが、北の空に移動して高く見えるようになるとともに、朝夕の二度見るチャンスがありますので、観測条件そのものは良くなってくると言えるでしょう。4月4日には、北天一の見事な天体アンドロメダ大銀河(M31)と接近します。双眼鏡で観察しましょう。
5月になると地球から遠ざかって暗くなる一方ですが、北極星のすぐ近くを通過していきますので、一晩中観察できる絶好の観測条件となります。明るさは4〜7等とみられ、双眼鏡や小さな望遠鏡を使って観察できます。
この頃、パレットおおさきの星をみる会でも30cm望遠鏡で観察していただくほか、プラネタリウム投映や各種講座等で、最新情報をお届けする予定です。
この彗星は、大崎生涯学習センターでの観測でも、木星より遠くにありながら短い尾が発生するしっかりとした姿をとらえることができました。春には大いに期待できると思います。
写真:2012年6月25日のパンスターズ彗星 (筆者撮影)
● 年末に歴史的大彗星となるか、アイソン彗星
図 アイソン彗星
2012年9月21日に、ISON(国際光学科学ネットワーク)の40cm 望遠鏡で発見された彗星です。
2013年11月28日には太陽−地球間の約1/100にあたる180万kmまで太陽に大接近。最盛期には満月ほどの明るさとなるマイナス13等で輝く可能性があります。
2007年のマックノート大彗星のように,白昼の青空の中で輝く姿が観測されるかもしれません。
写真 2009年1月の白昼の青空で輝くマックノート彗星
この彗星は、現在16等(写真)。暗いとはいえ、まだ木星軌道の外側の遠距離を考慮すると、期待どおりの推移と言えます。
写真:2012年12月のアイソン彗星 (筆者撮影)
このペースで成長すれば、9月頃から明け方の空に小さな望遠鏡で見えるようになり、11月初旬には暗い空だと肉眼で見える5等台、中旬には3等台となります。
さらに11月下旬から12月初旬にかけては、日の出数十分ほど前の朝焼けの中で、大変明るく輝く頭部と、長くみごとな尾をたなびかせた大彗星となると期待されます。
その姿は,昨年1月に太陽に近づいて南半球で大彗星となったラブジョイ彗星(写真)に似たイメージになるのではないでしょうか。
12月中旬以降は、太陽から離れるに従って少しずつ暗くなりながらも朝方の空に高く昇るようになり、年末年始にかけて肉眼や双眼鏡で楽しめる状態が続きます。
彗星は、見える位置は正確に計算できますが、明るさや尾の状態などは実際に観測してみないとわかりません。過去には予報通りに明るくならずがっかりさせられる彗星もたくさんありました。
しかし、アイソン彗星は、おおかたの研究者が明るい彗星になるのではないかという見方をしています。
パンスターズ彗星とともに、歴史的な大彗星になることを楽しみにしましょう。
●4月26日朝、わずかな部分月食
天体が他の天体にかくされることを「食」といいます。日食は、月が太陽をかくし、月食は月が地球の影に入りこんで暗くなる現象です。今年は、地球全体では日食が2回、月食が1回ありますが、そのうち日本で見えるのは4月26日の部分月食だけです。
朝焼けの中、ほんのわずか欠けた状態で、日の出とともに西の地平線へと沈んでいく「月入帯食」となります。なるべく西の空が開けている場所で観察しましょう。月のすぐ上には、環のある惑星・土星が輝いています。
左)図 部分月食の様子 ・ 右)写真 部分月食 (2012年6月4日 筆者撮影)
●8月12朝、スピカ食
この日、日没からわずか30分後の南西の空低くに注目です。双眼鏡や望遠鏡で、細い月を探しましょう。すると、月の縁に一個明るい星が見つかるでしょう。おとめ座の一等星スピカです。大崎では、18時55分ごろに月の暗い側に吸い込まれて消えていき、19時10分頃再び明るい縁から現れます。岩手県や山形県の一部では月の縁すれすれを通過する「接食えんぺい」という現象が見られ、月のクレータの凹凸に出入りして、星が明滅するスリリングな光景を見ることができます。
●12月2日朝、水星食
惑星が月にかくされる現象は「惑星食」。11月の下旬に明けの空で見ごろになった水星が、12月2日夜明け前の東の空の低空で、非常に細い月に隠されます。「水星食」です。空が澄んでいれば、双眼鏡で楽しめますが,より楽しむために天体望遠鏡を使いたいものです。
図 水星食の経過図 (ステラナビゲータで作成)
●ペルセウス座流星群とふたご座流星群に注目
8月12日にピークを迎える「ペルセウス座流星群」と12月14日の「ふたご座流星群」は、年間を通して最も活発な流星群です。
ペルセウス座流星群は夜半過ぎに月が沈みますので好条件で観察できます。
ふたご座流星群は満月近くの月がありますので条件はよくありませんが、近年活発な状態が続いていますので、ぜひ空を見上げてほしいものです。
それ以外にもオリオン座流星群などいくつか活発な流星群がありますが、今年はどれも月明かりのため条件としてはよくありません。
左)ペルセウス座流星群の見えかた 右)オリオン座流星群
●その他の天文現象
その他、主な天文現象を「表」にまとめました。
春には土星、冬には木星が見頃となります。現在木星は宵の星空のおうし座で輝いています。近くにはプレアデス星団(すばる)などがあり、にぎやかです。1月22日、2月18日、3月18日には月が近づいて、より一層華やかになります。
これ以外にも、月や明るい惑星、一等星などの接近があります。
金星は夏以降に夕方の空で一番星として輝くようになります。
天王星・海王星は秋の夜空で見やすくなります。
ふだんなかなか見るチャンスが少ない水星が夕方に見やすくなるのは、2月17日頃と6月13日頃、10月9日頃です。
誕生日の星座としてもおなじみのかに座には、40個以上の星がひしめく「プレセペ星団」がありますが、この中を7月3日に金星、9月9日には火星が通過し、双眼鏡で楽しめます。
中秋の名月は9月19日、十三夜は10月17日です。旧暦7月7日の伝統的な七夕は8月13日です。
これ以外にも,突発的な現象や明るい新天体の出現があるかもしれません。今年も星空や宇宙に注目しましょう。
●図でみる2013年の天文現象
1月
初旬〜C/2012
K5
リニア彗星が地球に接近中(約5等)
元日 初日の出06:53(大崎市)
2日 長周期変光星うみへび座R
(3.5〜10.9等)が極大光度の頃
3日 しぶんぎ座流星群が極大 (4日未明にかけて、条件は悪)
5日 下弦、小寒
12日 新月
15日 21:05アルゴルが極小光度
18日 17:54アルゴルが極小光度
19日 上弦
20日 大寒
23日 木星と月、ヒアデス星団が近づく
27日 満月 |
2月
3日 下弦
4日 立春
22:50アルゴルが極小光度
7日 19:40アルゴルが極小光度
夕方、水星・火星・海王星が接近
9日 火星と水星が最接近
10日 新月
17日 水星が東方最大離角(夕方、西の低空に見ごろ)
18日 上弦、雨水、木星と月が接近
22日 木星が東矩 (夕方の空おうし座に見やすい)
26日 満月
27日 21:25アルゴルが極小光度
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3月
5日 下弦、啓蟄
10日 パンスターズ彗星が 太陽に最接近(−3等?)
12日 新月
13日 パンスターズ彗星と月、 天王星が最接近
18日 月と木星が接近
20日 春分(20:02)、上弦、
26日 金星が外合(夕方の空に移ります)
27日 満月
28日 月とスピカが接近(豪州でスピカ食)
月末 パンスターズ彗星が明け方の空でも見え始める |
4月
1日 水星が西方最大離角(明け方の東空に見頃)
3日 下弦
5日 パンスターズ彗星がアンドロメダ銀河に近づく
清明
10日 新月
14日 月と木星、アルデバランが並ぶ
18日 上弦
20日 穀雨
22日 4月こと座流星群が極大(条件は悪)
26日 満月、夜明け前にわずかな部分月食
29日 土星が衝(太陽の反対の位置)となり見頃
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5月
パンスターズ彗星が北極星に近づき 一晩中みえる
2日 八十八夜、下弦
5日 立夏
6日 みずがめ座η流星群が極大
10日 新月、オーストラリア方面で金環日食
11日 細い月と金星、木星が並ぶ
18日 上弦
21日 小満
22日 月とスピカが接近
25日 満月、金星と水星が最接近
27日 金星,木星と水星が接近
29日 金星と木星が最接近
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6月
1日 下弦
5日 火星が地球から最遠(約3億7千万km)、
芒種
9日 新月
13日 水星が東方最大離角(西の夕空に見頃)
17日 上弦
21日 夏至(14:04)、月とさそり座β星が接近
23日 満月、月が今年最近(35万6991km)
30日 下弦
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7月
2日 冥王星が衝、いて座で14等
4日 金星がかに座のプレセペ星団を通過
7日 七夕、小暑 8日 新月
くじら座の長周期変光星ミラが極大の頃
16日 上弦
17日 月が土星と接近
22日 金星としし座レグルスが接近、
明け方水星と木星が接近
23日 満月、大暑
28日 みずがめ座δ南流星群が極大
30日 下弦、水星が西方最大離角、
明け方の東空に見頃
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8月
4日 月と木星、火星、水星が接近
7日 新月、立秋
12日 夕方おとめ座スピカが月にかくされる
(大崎市古川で潜入18:55頃、出現19:10頃)
13日 伝統的七夕(旧暦7月7日)
ペルセウス座流星群が極大(条件良)
14日 上弦
21日 満月
23日 処暑
27日 海王星が衝となりみずがめ座で見頃を迎える(7.8等)
28日 下弦
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9月
5日 新月
6日 金星とスピカが最接近
7日 白露
9日 火星がプレセペ星団を通過、
月と金星、土星が接近
13日 上弦
17日 みずがめ座ν星(4.5等)が月に隠される
18日 夕方、金星と土星が最接近
19日 満月、中秋の名月、
23日 秋分(05:44)
25日 水星とスピカが大接近
27日 下弦
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10月
4日 天王星が衝となり、うお座で見頃(5.7等)
5日 新月
7日 月と水星、金星、土星が接近
8日 寒露、10日にかけて10月りゅう座流星群が極大
9日 水星が東方最大離角
12日 上弦
17日 十三夜(後の月)、 金星とアンタレスが最接近
18日 火星とアイソン彗星(約7等)が接近
19日 満月
21日 オリオン座流星群が極大
23日 霜降、21:12アルゴルが極小光度
27日 下弦
31日 エンケ彗星がおとめ座銀河M87に接近 |
11月
初旬 アイソン彗星が約6等、双眼鏡で見える明るさ
1日 金星が東方最大離角(夕方西空に最も見やすい)
3日 新月、アフリカ方面で金環皆既日食
5日 おうし座南流星群が極大の頃
7日 立冬
10日 上弦
中旬 アイソン彗星が約3等、肉眼で見える明るさ
12日 おうし座北流星群が極大の頃、
22:55アルゴルが極小光度
15日 19:44アルゴルが極小光度
17日 しし座流星群が極大(条件悪)
18日 満月、彗星が西方最大離角
20日 アイソン彗星の明るさが約1等に
22日 小雪、エンケ彗星が太陽に最接近(7等)
25日 アイソン彗星とエンケ彗星が接近
26日 下弦
29日 アイソン彗星が太陽に最接近(−13等?)
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12月
アイソン彗星が夜明けの空に 明るく見える
2日 水星食(大崎で5:34頃)
3日 新月
5日 21:27アルゴルが極小光度
7日 大雪、
金星が最大光度(夕空で−4.7等)
10日 上弦
14日 ふたご座流星群が極大(条件悪)
17日 満月
22日 冬至(02:11)、
こぐま座流星群が極大(条件悪)
25日 下弦、23:10アルゴルが極小光度
28日 19:59アルゴルが極小光度
年末年始にかけてもアイソン彗星が輝く
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●2013年の天文現象ガイド
今年の天文現象を楽しむために、ぜひパレットおおさきに足をお運び下さい。
プラネタリウム番組「おおさき星空散歩」では、「パンスターズ彗星とアイソン彗星」「部分月食」「スピカ食」「水星食」等々の今年の天文現象を、画像を交えてわかりやすく紹介します。
1月23日の「初歩の天文学」(10時〜11時半、視聴覚室)では、今年の星空の見所と楽しみ方、観察のしかたを詳しく紹介します。
●天文ボランティアスタッフ募集
大崎生涯学習センターでは「星空のもと家族・地域の絆を強めよう」を合い言葉に、家族・地域ぐるみで星空と親しむ「絆プロジェクト」を展開中です。星をみる会や星空音楽会を運営する「天文ボランティア」を募集しています。
星空を一緒に見たい方、楽しみたい方、子どもや地域の皆さんに星空を見せたい方、イベントが好きな方どなたでも歓迎です。みんなで楽しく星空を見上げましょう!
問い合わせ:大崎生涯学習センター(電話0229−91−8611)。
この記事作成にあたり,「2013年天文現象カレンダー(白河天体観測所&チロ天文台:藤井旭氏提供),「藤井旭の天文年鑑2013年版」「天文年鑑2013」
「星空年鑑2013」を参考にさせていただきました。
*この記事中の星座および天文現象のシミュレーションには,アストロアーツ社製ステラナビゲーターを使用しました。