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ギリシア神話の世界

 

 星座を眺めながら、神話を聞いていると、頭の中がこんがらがってきます。ゼウスというのは、しょっちゅう登場して頭の中には入ってくるんだけれど、アストライアーにポセイドン、ヘラにデメテール、アスクレピオス、アルカスとアトラス、アルゴル、誰が誰だか、どんな関係なのか、わかんなくなっちゃいます。
 そこで、こうした星座のお話の中に出てくるギリシア神話にまつわる神様のお話、その人間関係といいますか、神様関係をお話ししましょう。

●惑星の名前とギリシアの神の血縁関係

 ギリシア神話で一番有名な神様、一番偉い神様は「ゼウス」ですね。ギリシア神話の最高の神で、大神ゼウス。まずは、ゼウスという神様を覚えましょう。
 実は、太陽系の9つの惑星のギリシア名には、このゼウスを中心にした家族の名前が割り振られています。簡単にいえば、9つの惑星たち、これは全員が家族関係になっています。

まずは、9つの太陽系天体に登場してもらいましょう。

 太陽は、英語ではサンですが、これは神様のなまえではありません。ギリシアの神様では、ヘリオス。ヘリオスは、太陽の神で、同じく太陽の神アポロンと同じ神ともされる。ゼウスの父クロノスの兄弟テイアの息子ですので、ゼウスのいとこになります。曙の神エオスや月の神セレネの兄弟。

水星は、英語でマーキュリー。これは、ローマ神話の商業と盗賊の守護神メルクリウスMercury)からきていて、ギリシャ神話では神々の使者である伝令の神・ヘルメスに相当します。ヘルメスは、ゼウスプレアデス姉妹のひとり・マイアの子供です。非常に聡明で器用で素早く、宵と明け方の空を行き来する様子に、すばしこい伝令神ヘルメスの姿が結びつけられたのです。

金星は英語でヴィーナス。美と愛の女神の名前で、ローマ神話ではウィーヌス、バビロニアではイシュタル、ギリシャ神話ではアフロディテに相当します。アフロディテは、クロノスウラノスを切り付けたとき、ウラノスの体の一部がもとになって生まれました。または、ゼウスと女神ディオネの子という説や、海の泡から生まれたという説があります。

 地球は、英語でアースですが、惑星の中で地球だけは、ギリシャ神話やローマ神話をもとにしていません。最近、地球の自然環境全体をガイアとよぶこともあります。ガイアはゼウスのおばあさんであり、おっぴさんです。

 月は、英語でムーンですが、ローマではルナ、ギリシャでは月の神アルテミスまたはセレネと呼ばれていました。
 月の神アルテミスは太陽神アポロンの双子の妹です。アルテミスアポロンは、ゼウス(木星)と女神レトの子供でもあります。また、アルテミスはプレアデス姉妹の主人であったりオリオンの恋人にもなりました。
 一方、月の神セレネは、太陽の神ヘリオスの妹にあたります。ヘリオスは、巨神族の長兄ヒュペリオンテイアの息子で曙の女神エオスと兄弟です。

 火星は英語でマーズ。これは、ギリシア神話では、ゼウス(木星)とヘラ(=ユーノー、ジュノー:第三番小惑星)の息子で、軍神アレス、ローマ神話のマルスに由来します。マルスは、ギリシャ神話と関連づけられる前には農業の神でした。3月は英語でマーチですが、これはマルスからきています。また、さそり座のアンタレスは、火星の敵という意味のアンチ・アレスから来ています。

 木星は英語でジュピター。これは、ローマ神話の主神ユピテルに由来し、ギリシア神話の大神ゼウスに相当します。クロノス(土星)の息子です。

 土星の英語名サターンはローマ神話の時の神サトゥルヌスで、ギリシア神話では父ウラノスを抑えて天地の支配者の座についた巨神族クロノスです。サターンは、英語のサタディ(土曜日)の元となった単語です。

 天王星はウラノスで、ギリシア神話の天空の神ウラノスの名前がそのまま付けられています。クロノス(土星)やタイタン(土星の衛星)など巨神族の父親。

 海王星は、ローマ神話での海の神の名前でネプチューンです。ギリシア神話では海神ポセイドンにあたります。クロノス(土星)の息子でゼウス(木星)の兄にあたります。

 冥王星は、ギリシャ神話で冥界(死者の世界)の王プルート、ギリシャ神話のハーデスの別名・プルトンに由来します。太陽から非常に遠く,暗黒の世界であることからついたのでしょう。ハデスはクロノス(土星)とレアの息子で、ゼウス(木星)やポセイドン(海王星)の長兄にあたります

また、小惑星や衛星の名前としても、ギリシア神話の神たちが多数登場しています。

ベスタ:ゼウスの姉のヘスティアは、ギリシア語で「かまど」の意味。ラテン語ではウェスタVestaで、第4番小惑星ベスタの名前になっている。

ジュノー:軍神アレス(火星)の母ヘラの別名ジュノーに由来します。

 

ですから、まとめますと、ゼウスを中心にすれば、太陽・ヘリオスはゼウスのいとこ。

水星・ヘルメスはゼウス息子。金星アフロディテは、ゼウスのおじいさんウラノスの体の一部分、または、ゼウスの子。
地球ガイアは、ゼウスのおばあさんであり、おっぴさんです。月アルテミスまたはセレネはゼウスの子。
火星アレスもゼウスの子。木星ゼウスは、ゼウス本人。土星クロノスは、ゼウスの父親。

天王星はウラノスで、ゼウスのおじいさん。海王星ポセイドンは、ゼウスの兄。冥王星はプルートまたはハーデスで、ゼウスポセイドン(海王星)の長兄にあたります

このようにして、まずゼウスを中心とした家族関係を理解することをお勧めします。

 

 

●オリュンポスの神々

こうした、ゼウスを中心とした一家は、ギリシアの一番高い山オリュンポス山に住んでいた、というお話があり、この神様たちを「オリュンポス一族」または「オリュンポスの神々」と呼んでいます。

オリュンポスの神様というのは、ゼウスと、奥さんのヘラ(家庭の神)、もうひとりの奥さんのデーメーテール(農業の神)、海の神様ポセイドン(海の神)、ヘラとの息子のアレス(闘いの神)とへパイトス(鍛冶の神)、おばさんのアプロディテ(愛と美の神)、女神レトの間のアポロン(太陽の神)とアルテミス(月の神)の兄弟、女神メテスとの間のアテナ(知恵の神)それからマイアという人間の女性とのこどものヘルメス(伝令・泥棒の神) 、セメレとの間のディオニュソス(バッカスともいい、酒の神)、の12の神様です。

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●ギリシア神話での創世記 ガイア〜ウラノスの世代

これらの神様が、いったいどんな世界にいたのかをしっていただくために、ギリシア神話の世界がどのようにはじまり、どのようにゼウスが一番偉い神様になったのか、その歴史を見てみましょう。題して、「ギリシア神話の始まり」です。

 この世の始まりはカオス(混沌)でした。ここから、大地の女神ガイアが生まれ、ガイアは眠りながら、夫である天空の神ウラノスを産みます。その後、ウラノスガイアは、この地上に山々や木々と花々、鳥や獣を、また天には星々を生み出しました。

 やがて、ウラヌスが降らせた雨は、大地に水をたたえ湖や海ができます。星々の広がった天(ウラノス )は大地(ガイア)を包み込み、天と地が創造されたのです。

 さて、親子であるガイアウラノスは、多くの子をもうけます。まずは巨神族 (ティタン神族)として知られるたくさんの神々、目がひとつしかない3人のキュクロプス族(一眼巨人)、百の手と五十の頭をもつ3人のヘカトンケイル(百腕巨人)でした。

 しかし、ウラノスはこれらの醜い子どもたちを嫌がり、また自分の権力を奪われることをおそれ、生まれてくるとすぐにタルタロス(冥界・地獄)に押し込めてしまいました。このことを、母であるガイアは怒り、息子たちにウラノスを倒すことを勧めますが、子どもたちはウラノスを怖がり、ガイアの計画に応じたのは、巨神族の末っ子のクロノスただひとりでした。

 ある夜、ウラノスがいつものように妻ガイアのところにやってくると、ガイアの指示で物陰に息をひそめていたクロノスは、ウラノスが眠り込むのを待って刀で切りつけます。こうして、巨神族のクロノスウラノスをおさえ、巨神族が天地を支配することになります。

 このとき、ウラノスの体の一部がもとになって、美と愛の女神アフロデティ<金星>が生まれたとされます。

 

●巨神族の繁栄・衰退とゼウスの台頭

 さて、クロノスは両親であるガイアウラノスから、「自分自身の子供によって支配者の地位を奪われる」という予言を受けていました。クロノスはこれを恐れ、妻である女神レアが子供を生むたびに、それを呑み込んでしまいました。

 レアはこれを悲しみ、6番目の子供だけは助けたいと思いました。レアは、ガイアウラノスに相談し、クレタ島のイデ山 の洞窟に隠れて子供を生みます。生まれたばかりの子をガイアにに預けると、赤んぼうの代わりに大きな石を産着にくるんでクロノスのもとへ持ち帰りました。クロノスは疑いもせず、その大石をひとのみしてしまいました。

 さて、この6番目の子供というのが、ギリシア神話の大神ゼウスです。ゼウスは、クレタ島の王の娘アドラステイアイーデーに預けられ、クレタ島アイガイオン山の洞窟で、乳母代わりの雌山羊アマルテイア<やぎ座>の乳を飲んで育ちました。ゼウスは立派な青年に成長すると、兄や姉たちを呑み込んだ父クロノスに復讐を果たします。ゼウスは、海の老神オケアノスの娘メティスに手伝ってもらい、クロノスに薬を飲ませ、ゼウスの身代わりとして呑み込まれた大石や兄弟たちを次々と吐き出させたのです。

 こうして、ヘラヘスティアデメテルの三人姉妹と、ハデスポセイドンゼウスの三人兄弟たちがそろいます。兄弟たちはゼウスをリーダーとして、クロノスの巨神族と激しい戦いを繰り広げました。この戦いで、巨神族はみな追放されましたが、特に勇猛だったアトラス<うしかい座>だけは見せしめとして、神々の住む天球を支えるという罰を受けました。こうして、ゼウスたちは、巨神族に代わってこの世を支配することになったのです。

 

 この6人の兄弟は、それぞれの分野での支配者になっていきます。ヘラは兄弟であるゼウスの正妻となり天空の女王となります。ヘスティアはかまどの女神、デメテル<おとめ座>は農業・豊穣の女神、ハデスは冥界の神、ポセイドンは海の神、そしてゼウスは天空の神という具合です。ゼウスは末っ子ながら、クロノス率いた巨神族を退けた功績で、大神として仰がれるようになります。

 なお、ポセイドンは、はじめから海の神となったのではなく、巨神族で海の老神オケアノスの娘アンピトリテと結婚したので、そこから妻とともに海を支配するようになったとされています。

 

●星座にちなむギリシア神話の数々

星座とともに語られる神話となっているのは、オリュンポスの神々やその周りの神々や人間たちが関係するお話です。ここでは、とうていかけません。ので、後々星座ごとにまとめていきたいと考えております。