火星の「鳴子」にも温泉!?

 火星の「Naruko」クレーターの地下水の吹き出しについて

 

 

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 昨年1月,火星の南半球にある小さなクレーターが「Naruko」と命名されました。
 その後の調査で,「Naruko」は,わたしたちの大崎市鳴子温泉にちなんで命名された,ということが,広島県の佐藤健さんらの調査協力で判明しました。ちょうど,1年前の8月には,新聞・テレビで大きく取り上げられ,地元でも話題になりましたので,ご存知の方も多いかと思います。

 さて,再び佐藤先生のご協力による,「Naruko」クレーターに関するビッグな続報です。
 なんと,「Naruko」クレーターの壁面に,液体の水が流出したと思われる跡が見つかったのです。
もっと正確にいえば,2005年に水の流出が認められたクレーターに,昨年「Naruko」と命名された,ということになります。
 クレーターは,壁面の峡谷に地下水が流出してできたとみられる堆積物がみつかるなど,地質的に活発な場所であることが明らかになっています。科学者によれば,過去10年間の間に液体の水が流れたのだろうとのことです。
 非常に寒冷な火星の表面に液体の「水」となれば,その温度によらず,(火星では)温泉が湧いた! と考えられるのではないでしょうか。温泉で有名な「鳴子」と,火星の「Naruko」がつながった! 実におもしろい話です。

提供:NASA/JPL/Malin Space Science Systems

 

 この地下水の流出は,アメリカ航空宇宙局(NASA)の観測に基づく2006 年の学術論文によって明らかにされていました。
NASAの火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーのホームページに掲載された2006年12 月6日付けのニュースリリースによる情報は以下の通りです。

 同探査機は2000 年6月,火星の南半球に若い形状(起伏の大きい)の峡谷(ガリー)を発見した。

 以後,1万個の峡谷が複数の探査機で撮影されていますが,「若い地形は現在も活動しているのはないか」との仮説のもとに,その後も継続的に観測している。
すると,火星の南半球のシレーンの海にあるクレーターの壁面の溝で変化がみつかった。
2001 年12 月22 日の画像(左)には何ら目立たなかった場所に,2005 年4 月24 日に撮影した画像では明るいスジが写っていた。
 科学者たちは,2001 年から2005 年にかけての数年の間のいずれかの時点で,クレーター外壁の内斜面の地下
から液体の水が流れ,反射率の高い物質を堆積させながら,流れ落ちていったのだろうと考えている。
 流れ落ちたスジの末端部分が指状に広がっているのは,液体の水が少量の土石流を含みながら谷底に流れ落ち,25 度ほどの傾斜の坂にあがろうとしてできた形であると考えられる。
 なお,NASAは,同じく火星南半球のケンタウリ台地の
クレーターにも,同様の地形が見つかったことを発表してい



提供:NASA/JPL/Malin Space Science Systems



 以上のような,学術的にも大きな価値をもつクレーターが,「Naruko」クレーターだったわけです。


 この事実が論文で発表されたころは,まだ「Naruko」と命名される前でした。

命名当時も,この事実はわたしたちは知りませんでした。

 その後,東亜天文学会の佐藤健氏が,IAU火星命名タスクグループ議長のブラッドフォード・スミス博士に問い合わせた結果,以上のことが判明した次第です。

 スミス博士は,「このクレーター内の地下水流出によって作られたと思われる複数の溝があると科学者のレポートがあった。温泉で知られる鳴子の町の名を,このクレーターに命名するのは適切だろう」と考えたそうです。

 火星は太陽から遠く非常に寒冷な星。平均気温はマイナス40 ℃を下回るとされます。
 その火星に「水」が流れ出たのです。
 それは、水温によらず「温泉」が湧いたと考えることもできるのではないだろうか...,と佐藤先生はおっしゃいました。
 「Naruko クレーターは火星の温泉」「火星の鳴子にも温泉が湧いた!」「この白い部分は火星の湯ノ花か?」などと考えると,非常におもしろいですね。

「鳴子クレーターの詳細な画像と流出の場所(左側の矢印)」

提供:NASA/JPL/Malin Space Science Systems



「Naruko」クレーターは,国際天文学連合(IAU)によって命名された,火星の南緯-36.2 度,西経161.8度にある直径4.4km の小クレーターです。

「以前の日本の町」として2008 年1月18 日に米国地質調査所(USGS)のホームページに掲載されました。

大崎生涯学習センターからスミス博士への確認により,「有名な温泉地である大崎市の鳴子温泉にちなん
で命名された」ことが,2008 年8 月に判明していました

 

<過去の当センター発表の資料>

 

 「Naruko」クレーターの命名について

 

プラネタリウム便りH20年8月鳴子号(PDF)

報道資料「火星クレーターに「鳴子」と命名」(PDF) 

 

 

 

世界天文年2009(The International Year of Astronomy 2009)

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