冬至の頃の日の出・日没時刻

 

 2008年に作成した資料に加筆しました

 

 12月22日は、二十四節季のひとつ冬至(とうじ)です。

 

 昔から、柚子(ゆず)湯に入り、かぼちゃを食べる日とされています。

柚子には邪気を払う力があり、かぼちゃは野菜の少ない時期の貴重な栄養源といわれます。

冬本番の前に、体を温め、しっかり栄養をとろうという昔からの知恵だったのでしょう。

みなさんも、冬至の日には柚子湯にはいったり、かぼちゃを食べてますか?

 

 さて、天文学的にこの「冬至」について考えましょう。

 

 お昼頃、太陽が真南にさしかかったとき地平線からの高さが最も高くなります。これを「南中」といいます。天体の南中高度は、その土地の緯度によって変わってきます。

北緯38.5°の大崎市古川では、春分・秋分の日に太陽南中高度は51.5°になります。夏至の日には74.9°まで高くなりますが、冬至の日には28.1度にしかなりません。

太陽が最も天球上の南、「冬至点」にさしかかる「瞬間」は、22日14時30分(天文年鑑2011年版)です。

この日は一年で太陽南中高度がもっとも低くなるため、太陽が地平線上に昇っている時間、つまり昼の時間が一番短く、夜が一番長くなります。

 

 冬至の頃の日の出・日没に関して、以前このような質問をいただきました。

 

  なぜ、一年で最も日の入り時刻が早いのは12月初旬で、冬至の頃ではないのですか?

 

 

 電話では、簡単なご説明でしたので、くわしくこの問題を考えてみることにしましょう。

  

 下は、大崎市古川(パレットおおさき天文台)での、2008年12月から1月中旬までの日没・日の出時刻と、それをもとにして算出した昼・夜の時間の長さです。

 

大崎市古川での日出・日没時刻(2008年

                          *日の出・日没時刻は「ステラナビゲーターVer8」で計算しました

                          *秒まで導出していますが検討のためのあくまで計算値です。

月日

日の出時刻

日没時刻

昼の長さ

夜の長さ

 

2008121

  6:33:31

 16:16:45

9:43:14

14:17:44

 

122

  6:34:29

 16:16:34

9:42:05

14:18:52

 

123

  6:35:26

 16:16:24

9:40:58

14:19:57

 

124

  6:36:21

 16:16:18

9:39:57

14:20:58

 

125

  6:37:16

 16:16:13

9:38:57

14:21:57

 

126

  6:38:10

 16:16:10

9:38:00

14:22:52

 

127

  6:39:02

 16:16:09

9:37:07

14:23:45

最も日の入りが早い日

128

  6:39:54

 16:16:11

9:36:17

14:24:33

 

129

  6:40:44

 16:16:15

9:35:31

14:25:18

 

1210

  6:41:33

 16:16:21

9:34:48

14:25:59

 

1211

  6:42:20

 16:16:29

9:34:09

14:26:37

 

1212

  6:43:06

 16:16:39

9:33:33

14:27:12

 

1213

  6:43:51

 16:16:51

9:33:00

14:27:43

 

1214

  6:44:34

 16:17:05

9:32:31

14:28:11

 

1215

  6:45:16

 16:17:22

9:32:06

14:28:34

 

1216

  6:45:56

 16:17:40

9:31:44

14:28:55

 

1217

  6:46:35

 16:18:01

9:31:26

14:29:11

 

1218

  6:47:12

 16:18:24

9:31:12

14:29:23

 

1219

  6:47:47

 16:18:48

9:31:01

14:29:33

 

1220

  6:48:21

 16:19:15

9:30:54

14:29:37

 

冬至 1221

  6:48:52

 16:19:43

9:30:51

14:29:40

昼が最短・夜が最長

1222

  6:49:23

 16:20:14

9:30:51

14:29:37

昼が最短

1223

  6:49:51

 16:20:46

9:30:55

14:29:31

 

1224

  6:50:17

 16:21:20

9:31:03

14:29:22

 

1225

  6:50:42

 16:21:56

9:31:14

14:29:08

 

1226

  6:51:04

 16:22:34

9:31:30

14:28:51

 

1227

  6:51:25

 16:23:14

9:31:49

14:28:29

 

1228

  6:51:43

 16:23:55

9:32:12

14:28:05

 

1229

  6:52:00

 16:24:38

9:32:38

14:27:37

 

1230

  6:52:15

 16:25:22

9:33:07

14:27:05

 

1231

  6:52:27

 16:26:08

9:33:41

14:26:30

 

200911

  6:52:38

 16:26:55

9:34:17

14:25:51

 

12

  6:52:46

 16:27:44

9:34:58

14:25:08

 

13

  6:52:52

 16:28:34

9:35:42

14:24:22

 

14

  6:52:56

 16:29:26

9:36:30

14:23:32

 

15

  6:52:58

 16:30:19

9:37:21

14:22:39

最も日の出が遅い日

16

  6:52:58

 16:31:13

9:38:15

14:21:43

最も日の出が遅い日

17

  6:52:56

 16:32:08

9:39:12

14:20:43

 

18

  6:52:51

 16:33:04

9:40:13

14:19:41

 

19

  6:52:45

 16:34:01

9:41:16

14:18:35

 

110

  6:52:36

 16:35:00

9:42:24

14:17:25

 

 

 

 ごらんのように、12月7日が最も日没が早い日で、宮城県大崎市では午後4時16分には太陽が沈みます。冬至の日より半月も早い時期であることを意外に感じる方も多いかもしれません。

さらに、最も日の出が遅い日はというと、これも冬至ではなく、それより半月後の年明け5・6日ごろのことになります。

 

 では、どうして、日没の最も遅い日、早い日は、冬至の日と同じにはならないのでしょうか?

それは、地球の回転の軸(地軸)が23.4度ほど傾いていること、そして地球が太陽の周りをまわる軌道(通り道)がまん丸ではなくて楕円であることが主な原因です。

 

 太陽は、約24時間で天球上を一周します。昔は、単純にこれを一日としていました。実際の太陽の日周運動にもとづく時刻を「真太陽時」といいます。

ところが、太陽の高さは毎日変わります。そして地球の地軸が23.4°傾いているため、太陽は一年かけて空を大きな波を描くように動いているようにみえます。そのために、太陽が南北方向に位置変化する割合も毎日変わります。

 さらに地球の軌道は完全な円でなく、楕円です。わずかな差であれ、太陽に近い冬の時期は早く太陽の周りを回り、太陽から離れる夏はゆっくり回ります。

そういったことが原因となって、毎日毎日、「真太陽時」は変わるのです。それでは正確な時刻の運用ができませんよね。

そこで、一年間の太陽の動きを平均化した「平均太陽時」によって一日の長さや時間を決めることにしています。これが私たちが時計などで使っている時刻です。

「平均太陽時」で太陽の位置を測ろうとするために、季節により太陽の南中時刻が変わります。

 

 この 「真太陽時」と「平均太陽時」の差を「均時差」と呼びます。

これは、2月中旬と7月下旬にもっとも小さく、5月中旬と11月4日ごろに最も大きくなり、その間4月中旬,6月中旬,9月はじめ,12月下旬にはプラスマイナス0分となる曲線となります。

 

 

 この結果、同じ時刻における太陽の位置は、下の図のように変化します。

 1年のうちに、太陽の位置が「8の字」型を描いて運動する様子を「アナレンマ」といいます。

 

 日没・日の出時刻は、均時差の値と緯度や太陽の高さなどを調整した時刻を差し引きして計算します。

「緯度や太陽の高さなどを調整した時刻を差し引き」する方法については、少し難しい問題なのでここでは触れませんが、こうして調整した値が最もマイナスとなるのが日没の最も早くなる12月上旬で、もっともプラスになるのが日の出の最も遅くなる1月初旬となるわけです。

 

 以上のように言葉や式にしてしまうと難しいのですが、下の図をみれば、直感的にわかると思います。

朝と夕方について、冬至の頃の太陽の場所を拡大してみましょう。

 

 アナレンマの「8の字」の底のほうをみてみましょう。冬至(12/21)のころよりも、朝の太陽は1月初旬のほうが低いことがわかりますね。

 

 どうですか?

 長文だったので読み疲れた方もいらっしゃるかと思います。

 どうぞ柚子湯にでもつかってゆっくりお休みください。

 

 蛇足ですが、柚子というのは、「融通が利きますように」という願いも込められているそうです。

 来年は私も少しは融通が利くように、柚子湯をいただくことにしましょう。

 

文章:遊佐
 

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